第二十一回 信号処理にはピンポンゲームがお似合いだ!
(2006.8.6)

なんかここのところ、このコラムを月一更新を目標に45日おき更新みたいなことになっています。 わりとダルダルでやっているようにも思えるのですが、、、 でも、もうなんてゆうのか、ネタがね、、、ないのよね。。。
ネタの広がりも今ひとつというのか、、そろそろ新しい技術を仕入れたい、、でも頭がついていかないのと、 他にも色々やっていて忙しいと、、

そんなこんなで本当はもう少し暖めておこうと思っていたアイデアを公開しちゃいます。
えーと、その前にお断りですが、今回披露致しますアイデアは、前回の未踏ソフトウェア に応募して、惜しくも「この提案の波及効果が不明なため」に落ちてしまったネタです。
でも、また今回もこのネタで応募するつもりで、実は特許出願(特願2006−193382/出願日2006年6月16日)とかもしてしまっているので、これをパクりたい方はご注意下さい。
さらにいうとまだ一回も検証していない、、、プログラムを書いて実際に動かした試しは一度もない! 、、
そんなブツで特許出願をするというのも、いささか性急だったかも知れませんが、しかし大丈夫!多分動きます!。 でも、動いたところで「本当に面白い音なの?」ってのが自分自身にも分かりません。
そう考えると「波及効果が不明なため」というのは、正に的を得た回答だったわけですね。。〇rz
しかし、ネタ切れで瀬に腹は変えられないのと、下で書きますが未踏ソフトの協力者募集(ってもあと2ヶ月ありませんけど・・・・・)(※2006/11/28追記文章(一番下)もお読み下さい)を 兼ねてここで公開に踏み切る次第です。

噴射式トランスデューサの物理モデル実装と検証(←クリックすると当時の応募書類にリンクします)

そして、コチラは特許出願の書面です。未踏ソフトに提出したものと技術的にはほとんど変わりませんが、2次元以上(あとで説明します)もやろうと思えばできることをほのめかすような記述となっております。

変り種でも

僕は普段歩きながらとか、電車の中とか、家で本を読んでいる間とかに、色々と妄想にふけるというのか、 よく言えば思索を巡らすことが多いです。最近はこれからの人生的なところで、考えることも多いのですが、 それでもたまに信号処理のアルゴリズム考察が一時的にブームとなることがあります。
特に未踏ソフトの締め切りが近づくと、何か思いついて送らなきゃという気持ちが芽生えて、 ポコっとアイデアを1つ生産したりします。 前回の未踏ソフトの応募時期に、ちょっと変り種として思いついたのが、今から説明するこのアイデアです。

当時僕は、粒子というか、何らかの運動法則みたいなものを信号処理に応用できないかと考えていました。 基本的にはピンポンゲーム、あるいはブロック崩しみたいな感じのビジュアルがあって、 それをうまく音声信号の入出力と結びつけることで、面白おかしいエフェクトみたいなものが 作れるのではないかと思っていたわけです。
最初に考えたのは、箱の中にバーみたいなセンサーがあって、粒子がぶつかったときにパルス状の波形を生成するというもので、 粒子は大量にあって、その密度みたいなものでダイナミックレンジを表現できないかなーというものでした。 ま、どちらかというと、粒子1個=電子1個っていうようなイメージに近いというんですかね。
それはそれで、箱を転がしたり、障害物を置いたりとか色々できそうかなーとは思っていたんですが、 しかし、簡単な実験をやったりして、よくよく考えると、ダイナミックレンジを粒子の密度で表現するとなると、 過大なオーバーサンプリング処理が必要で、 まだまだ現在のDSP技術で実現は難しいだろうという結論に至ってしまい、このアイデアは脳内会議の末、却下となりました。
では、それほどオーバーサンプリングを行わない、あるいは全く行わなくても運動する粒子のアイデアを信号処理に取り入れられないかと、 色々と考えてみました。
ある日、僕は池袋のジュンク堂で本を物色しに行こうとしていて、ところが気の迷いで隣のスタ−バックスでトールサイズのカフェアメリカーノを持ち帰りで買ってしまい、飲み干すまでの間、周りの路地をウロウロとしていました。 僕は熱い飲み物が少々苦手で、待つということも同じく苦手だったため、こともあろうに買ったばかりのコーヒーを道の側溝に垂らし始めました。 コーヒーはもったいなかったのですが、代わりにそのとき考えていた問題の解決先が思い浮かびました。そう、シャワーです。

平面上にノズルとセンサを置いておきます。ノズルからは入力信号のサンプリング周波数に同期して等間隔で粒子が噴射されます。粒子の電荷らしきものは入力信号の振幅に比例します。粒子は基本的には真っ直ぐに進んで、その先にはセンサが設置されています。
センサから一つ一つの粒子はSinc関数のように見えます。つまり1つの粒子とセンサとの距離をとするとSinc(x)という値が、 センサのその粒子に対する検出値となります。全ての粒子に対する検出値の総和がセンサとしての出力値となります。
基本的に一定の速度で粒子がセンサに向かって直進する限り、このノズルとセンサの間で行われる信号処理は単なるディレイです。
しかしここがミソです。オーソドックスな信号処理のアルゴリズムといえば、ディレイ、コーラス、トレモロ、ディストーション、フィルタ、リバーブなどを挙げることができますが、ディストーションを除いて、全てはディレイの応用エフェクトなわけです。長い間その基礎となるアルゴリズムは、リングメモリへの相対アクセス、つまりはテープエコーのテープをそのままメモリに置き換えたようなものでした。
ここを、運動する粒子群というアイデアに置き換えたわけです。つまり、信号処理とブロック崩しのアルゴリズムを融合しちゃたわけさ!
実際このモデルに従えばディストーション以外のエフェクトは既存のアルゴリムを簡単に流用できます。
ディストーションやコンプなど、ダイナミック系のエフェクトは難しそうですが、電荷の大きな粒子を磁石でおびき寄せるという概念を導入できるかなとも思いますし、いざとなれば、既存のアルゴリズムに基づく信号処理と簡単に結びつけることができます。何しろ入り口も音声信号、出口も音声信号な分けですからね!

このアルゴリズムを思いついた僕は、1つの不安にかられました。アイデアを思いついたことがある人は誰でも感じるであろう「もう先に思いついた人がいる、つーか、それ常識だし」と言われてしまうという不安です。
特にGranular Synthesisは、対抗馬として真っ先に浮かびました。トランジスタも実用化されていない1946年に「全ての音は粒子表現により記述できる」D.Gaborは言っています。そしてGranular SynthesisはまさにGaborのアイデアを具体化したアルゴリズムだと世間では言われているのです。
そんなわけで、未踏ソフトに応募する前に、コンピュータ音楽―歴史・テクノロジー・アートに目を通してみました。この本は1996年に出版されているのですが、その当時までに開発・研究されていた音楽に関わるコンピュータ技術を網羅した辞典のような本で、大半のページが信号処理に割かれています。
で、Granular Synthesisの章を特に重点的に読んでみましたが、幸い、僕が思いついたアイデアのそっくりさんは無かったのでした。もちろん1996年から10年も経過してしまっているわけですから、僕のアイデアが既に実装されていなかったという保証はありませんでしたが、しかし、これ以上確かな知識を仕入れる術も無かったので、ま、大丈夫だろうと思い未踏ソフトの方へ応募することにしました。

で、「もうあるよ」とは言われなかったのですが、結局冒頭の理由で落ちました。〇rz。。

協力者募集!!

この記事をみてピーンと来たアナタ!I WANT YOU!!
どなたか僕と一緒に未踏ソフトに応募しませんか?
メカトーフの法則によれば、二人で考えれば4倍の価値が創出できるらしいです!
ま、今期は難しくても来期あたりに応募する予定で、アイデアを出し合いましょう!
権利面では、それぞれのアイデアをそれぞれで出願するのか。あるいは連名で出願するのか、 話し合って決めることにしましょう。

では、お待ちしております。m(_ _)m

2006年11月28日追記!
トップページでも記載しましたが、お陰さまで2006年下期の未踏ソフトにこの提案が採択されました。 今期は一人で開発を進めることに致します。
上述したアイデア以外にも粒子化のメリットを十分に得られる幾つかのアイデアを実装するつもりですので、 ご期待くださいませ。


 

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