何気に、オーディオ編集TIPSは20回目を迎えました。20回目を記念して大喜びしたいと思います。わーい
さて、今回は鐘楼というか、ベルがたくさんある感じの音を作る方法を解説してみようと思います。
ま、今まで解説してきたテクニックを組み合わせすれば、そう大して難なくできることなので、面白みはそんなに無いのかも知れませんですけどね。。
手順1 金属音の生成
うーんと、このコラムの第九回でも解説しているのですが、
数十秒くらいのホワイトノイズを生成しておいて、そこから数百ミリ秒くらいの区間を選択して、畳み込み(Convolution)用のパラメータ(インパルスレスポンス波形)として読み込みます。
で、それを使って元のホワイトノイズを畳み込むわけです。1回くらい畳み込んだだけでは、特に変化は感じられませんが、
何回も何回も同じインパルスレスポンスで畳み込みを繰り返すと、段々と音程感を匂わせてくるというのか、もともとはホワイトノイズだった波形の周波数特性に凹凸が生じて
シンバルをグリグリ擦り続けたような金属音へと変化します。
で、前回は解説していなかったのですが、これをやる時のコツとして、畳み込んだ後の波形からもう一度、数百ミリ秒くらいの区間を選択してインパルスレスポンス波形として取り込みます。
このインパルスレスポンス波形は既に1回畳み込んだ分の周波数特性の凹凸が含まれていますので、これで2回目畳み込み処理を行うことで、3回分の畳み込みを行ったのと同じような結果を得ることが出来ます。
で、更に同じようにして、畳み込み後の波形からもう一度インパルスレスポンス波形を採取して畳み込みを行うと、7回畳み込みをやったのと同じような結果を得られます。
この方法を使えば3、4回畳み込みを繰り返すだけでも、周波数特性にかなり深い刻みの凹凸が生まれて、より音程感のある金属音を作ることができます。
手順2 ピッチベント
次に作った金属音にピッチベントをかけます。Adobe Auditonなどですと、「タイム・ピッチ」→「Pitch Bender」というメニューで、カーブを描くことで
ピッチベントできる画面が表示されます。波形全体を選択してこのエフェクトをかけます。ベント範囲は割りと狭く、半音くらいにしておいた方がよいです。
手順3 コピー
で、ピッチベントしたおいた波形の全範囲を選択してコピーします。コピーです。
手順4 リバース
で、ピッチベントしたおいた波形の全範囲を選択してリバースします。逆回転状態です。
ベントダウンしていたらベントアップに変わるし、
逆の場合もまた然りです。
手順5 AM変調
AM変調。いわゆるリングモジュレーションですね。全ての波形編集ソフトが対応しているわけではないと思うのですが、
Adobe Auditionですと、「編集」→「ミックスペースト」を選んで表示されるダイアログ画面で、ラジオボタンで「変調」を選ぶと、
選択中の波形と、クリップボードにコピーされている波形とがAM変調(つまりは足し算ではなくて掛け算)されます。
リングモジュレーションは、ベルっぽい音を作る時には昔から定番とされておりました。
2つのピッチが入力されると、その和と差の周波数が出力される(200Hzと300Hzの波形を入力すると、100Hz(差)と、400Hz(和))のですが、
これは大体は調性を無視した結果となって、不思議ちゃんな響きになるわけです。
で、ここまで説明して、勘の言い方は分かると思うのですが、今回はこのリングモジュレーションの超豪華版だと思ってもらってもいいっす。
元々はホワイトノイズから加工して作った金属的は、人間の耳的には、高音域を中心に甲高い感じの質感となっていて、逆に低音域はスカスカな感じがします。
(本当は高い音も低い音も平等に含まれているのですが、「人間の耳」というフィルタは−6dB/Octくらいのハイパスフィルタになっておりますので、
高音域中心に聴こえるわけです。(しかも低音の方が割と分解能が高い)
しかし、これが半音未満ずれていたりすると、差の成分は割りと低い周波数が多くなります。
ゴワーーンという重心の低さを保ちつつ、且つ重厚且つ金属的且つ不思議ちゃんな響きを実現できるという分けです。
手順6 さらなる畳み込み
金属音を単にAM変調しただけですと、よりギラついた金属音になるばかりで、イマイチ聴いた感じの情報量は少ないというのか、味気ない音のままです。
今まで周波数特性の凹凸を鋭くする方向で、ホワイトノイズから音程感のあるノイズを生み出してきたわけですが、今度はAM変調で新たな周波数成分が生まれてしまい、
むしろノイズっぽい感じに逆戻りした印象さえ受けます。
しかし、ここでさらに今一度、「波形の一部分を選択し、インパルスレスポンスとして取り込み、畳み込む」を実行することで、格段にベルっぽい音になります。
なぜこんなことが起きるのかといえば、鋭いピークを持つ成分の塊としての金属音にピッチベントとAM変調を掛けた状態というのは、各々の周波数成分が非常に複雑に
変化していることになるわけです。それはもうカオスそのものと言いますか、ランダムに、しかもワイドバンドにベントするオシレータが1000基くらい存在するような
複雑怪奇な周波数特性となっているわけです。
そのままだと人間の耳には余りあるというのか、雑音感が強すぎる音といえます。しかし、同じ金属音で畳み込みことで、複雑にベントしていたオシレータたちにフィルタがかけられ、
ON/OFF感に満ちた活気のあるオシレータの饗宴という感じの音に加工されるわけです。
手順7 フィルタ
これで低い成分の密度が高まり、ON/OFF感も高まり、とても音楽的なノイズへと変貌したわけですが、
相変わらず周波数成分の重心は上の方にありますので、−6dB/Octくらいのローパスフィルタをかけて、
人間の耳に合わせてやります。これで、耳に優しく、低音も豊富で活気に溢れる重厚なベルサウンドが出来上がります。
手順8 コンプ
そして最後に忘れてはならないのはコンプです。今回のように畳み込みを何度も何度も掛けていると、
音量差がかなり生まれるというのか、ピークが重なる部分ではハウリング起こしているっぽい音になります。
こんなときは文明の利器「コンプレッサ」を使わない手はございません!!。
最後にサンプルをどうぞ
サンプル1
サンプル2
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