えー、このコーナーは完全に更新が止まってしまい、前回の更新からは半年も経過してしまいました。。
ま、個人で誰にも束縛されずにやっていることですから、それはもうマイペースなものですが、
しかしこの半年感の間に色んなことをやっていましたからネタが決して無かった分けではありません。むしろ増えまくってます!!
さて今回は、純粋なインパルス応答ではなくて、効果音や、楽器の音など
様々なサウンドサンプルを畳み込みエフェクトのパラメータとして使う場合に
良く起こりがち問題と、それを避けたり軽減するための幾つかのテクニックを紹介いたします。
せっかく面白い音響効果が得られそうだったのに、いまいちな結果になっちゃったよ、
という問題はこれらのテクニックを使うことで少なくなりますので、畳み込みを使ってより幅広い音作りが可能となります。
良くある問題1:畳み込んだら低音だけやたら大きくなっちゃった
自然界の音はほとんどの場合、あのハイハットですら低域に重心がありますので、その自然界の音同士を畳み込みんだ結果は
当然重心が下に下がり過ぎる傾向にあります。また、波形自体が直流成分を多く持つ場合は、
直流成分ばかりが強調されて、波形が上か下にへばりついて、肝心の音が聴こえないような波形となってしまうこともしばしばあります。
こうした場合は、畳み込んだ後にイコライジングして、低域をバッサリとカットしてしまいましょう。
特に直流成分は、容赦なく完全にカットしてしまいましょう。カット後ノーマライズすれば、まっとうな波形を得ることができます。
但し注意しなければならないのは、編集の際のオーディオサンプルの解像度が、浮動小数点値でないと十分な結果が得られないことです。
仮に直流成分が可聴域に比べて30dB程度大きかった場合、これをカットしてノーマライズすれば、オーディオサンプルの量子化雑音は
そのまま30dBも悪化してしまいます。
畳み込みエフェクトを使い込む場合、こうした極端なイコライジングが多くなるため、
実用上量子化雑音が発生しない浮動小数点値オーディオサンプルに対応した
波形編集ソフトのご使用を強くお勧めします。
良くある問題2:かなりヘビーなフランジ/発信音みたいになっちゃった
自然界の音たちは、多くの場合ピッチがあります。音程があります。基本周波数があり、その整数倍の周波数帯にスペクトラムが集中する傾向にあります。
これを畳み込みのパラメータとして用いれば、非常に鋭いピークを持つフィルタの寄せ集め見たいになってしまい、
畳み込んだ結果は、何だか得体の知れない発信音みたいになってしまいます。
これを狙っている場合は、それはそれで宜しいのですが、しかし狙っていないのにも関わらずこうした結果になってしまった場合、
一体どうすればもうちょっと自然な感じになるのでしょうか?
実はこの問題に大して僕はいくつかのアイデアを紹介することができます。
短い時間を切り抜く
ピッチのある波形でも短い時間を切り取ると、比較的音程間が希薄なサウンドになります。特に音程が低い場合は、この傾向は顕著です。
同じパターンの波形が繰り返されることによって音程感は生まれますから、
逆に波形の繰り返し回数が少ないほど音程間は希薄になります。
これを利用すれば、音程感をもつサンプルの場合も、短く切り出だすことで、
周波数特性のピークの鋭さを緩和して、インパルス応答の代用としてそこそこ使える波形となることが多いのです。
短いサンプルであっても波形の最初と最後はフェーディングしておくことをお勧めします。
短く切り出したサンプルは、あまり響いて聴こえず、リバーブ的な要素よりも、あくまでEQとしての色合いが濃くなります。
しかし畳み込みの醍醐味はやはりピッチや音質が時間的に変化する波形をそのままフィルタに用いることで、予想のできない
残響感を得られることです。短い時間を切り抜く方法はこうしたニュアンスを犠牲にしてしまいます。
歪ませる
そこでもう1つの有効な方法となるのは波形を歪ませることです。
矩形波やノコギリ波といった人工的な波形を歪ませても、新たに発生する倍音は概ね基本周波数の整数倍の周波数に集中するため、
ほとんど問題は解決しません。
しかし自然界の音は、単調な音に聴こえても、ピッチのブレや非整数次倍音、僅かな残響を持っているため、
サンプリングされた波形を歪めるとこれらの成分が固まりになって変調され非常に複雑な倍音構成を持つようになります。
例えばエレキギターのコード弾きを歪ませると、ノイズのような音色になりますし、更に強く歪ませると単音の時もノイズのような音色に
なるかと思います。歪ませた音をインパルス応答の代りとして用いる場合、このノイズっぽさが周波数特性のピークの鋭さを緩和する働きをすることになります。
このノイズっぽさは単にホワイトノイズを付加するのとは異なり、元々の波形が持っていた音色の変化に連動しているものですので、
元々の波形の情報量をある程度残しつつ、ピークの問題を軽減することができます。
なお第四回でも解説しましたが、歪みを綺麗に処理するには一旦アップサンプリングした後に歪ませて、再び元のサンプリング周波数へダウンサンプリングさせることが有効です。
良くある問題3:ちょっと響き過ぎ
一般的にインパルス応答の波形は、数10ミリ秒間程度の非常に短い時間に振幅のピークが集中して、それ以降数秒間〜10秒間程度、小さな振幅の余韻が続く
という形をしています。
物を叩いたような音ならば、一般的なインパルス応答に近い波形をしています。しかし、声や自動車の音など持続する音をインパルス応答の代わりに使ってみたい
という欲求に駆られることは多いと思います。
ところがこうした持続音によって畳み込みを行うと、大抵は音像がぼやけてしまって何が何だか分からない音になってしまいます。
こうした場合は、意図的に音量の変化を加えて、インパルス応答らしく加工すると良いと思います。
人間の声だったら子音の部分など、音程感の無い部分を、20〜40dB倍程度増幅してみると、
直接音に該当するような主成分は、比較的聞き取りやすい音質となり、リバーブ成分が分けの分からない音というように、
メリハリを付けることができると思います。
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